ハイスコアガール 1・2 感想

  • 1巻

 1991年場末のゲーセンでスト2の筐体を挟み、小六の男子と女子が出会う、というのが物語の始まり。
 その出会いは"待ちガイル"や"投げハメ"でアホウな締まりになるのですが。
 
 そこから男子『矢口ハルオ』と女子『大野晶』は随所にあるゲームの筐体で出会うことになります。なにせ狭い町であり、ゲーセンや駄菓子屋やらでゲーム好きとして偶然/必然に出会ってしまうのです。そうして小学校では優等生の晶と劣等生のハルオが、ゲームを巡って奇妙な縁を育んでいきます。アホなカップルと争ったり、雨宿りに入った駄菓子屋でファイナルファイトを2人プレイしたりと、晶は学校では見せない面を見せ、ハルオは変わらないゲームアホっぷりをさらし続けます。この優等生にしてゲーム好きという女子のギャップと、アホを貫く男子のぶれなさとが良い対比となっていました。加えてキャラクタのベースのギャップ萌えとアホ男子がきちんと描かれているからこそ、それが揺らいだ時に揺さぶられる感覚が強かったです。例えば、
 
 という、学校のプールで垣間見る本性というど直球の小学校物の王道だったり、クライマックスの男子のアホな意地っ張りの折れ方だったり、判るとため息がつきたくなるぐらいの変容でした。
 ひっくるめて小学生の成長&友情&ほのかな恋愛物として最高でした。
 

 あと当然、『1990年代アーケード・ラブコメディー』を謳うからには1990年のゲーム世相を反映しきっていました。当時でさえ懐かしい平安京エイリアン、リアルタイムで新しいストリートファイト2、これから出るFF4などなど、ゲームタイトルから操作あるあるを含め、嫌みにならず軽すぎず詰め込んでいました。

 
 以上のようにアーケードゲーム物+小学生ラブコメの融合だけでも素晴らしいのに、3年後の2巻で更に面白さが飛躍するので尋常でありません。

  • 2巻

 1巻から3年後、晶の不在から始まる本作は――ラブコメとして圧倒的な姿を見せます。3つ目頂点の投入/第2のヒロインの登場により、ラブコメの強度が跳ね上がったのです。
 第2のヒロインは名前を小春と言い、勉強しか趣味が無いキャラとして登場します。それで中学生になっても相も変わらずにゲームに熱中し、アーケードゲーム機に通いまくるハルオを目にし、カルチャーショックを受け、興味を持ち、反発し、惹かれていきます。その変遷が実に中学生らしく、胸がきゅんきゅんする代物でした。会話しても意を汲んでくれずゲームアホの勝手ばかり言い、折角のプレゼントを粗末に扱われ、ゲームしている姿の没頭具合にどん引きします。
 
 でも。
 興味が無い灰色の世界から色と騒音に満ちた世界を垣間見せた自分のことしか考えないアホ中学生から目を離せない――とくらあ、もう落ちていくしかなく。何度も何度も繰り返し、ハルオがゲームしているのを『うしろで見ている』内に、どうしようもなくなります。
 
 何と初々しい――で、済ませられないのは1巻を経験したからには、晶との約束があるからには当たり前です。最後でとうとう不在のヒロインが帰還し、三角関係ですよ、三角関係!! 
 ・・・・・・もとい、ちょっと興奮しました。
  ゲーム物として。始まりである"ストリートファイター2"。大ヒットしたそれは寿命を延ばされ、3年という月日に飲まれてレトロとして消えず、"ダッシュ""スーパー""レインボー""X"と続きます。約束の続きを始めるために、おあつらえ向きな舞台がまだ用意されているのです。
 ラブコメとして。始めに出会った元からゲームを通して好きになったヒロインと、2番目に出会って好きになってゲームも好きになったヒロインとの競合という美しい対比となっています。
 事ここに至り、同時代的なゲーム物としての在り方と、ラブコメとしての在り方との融合が理想的にステップアップしました。後はもう怒濤のようにストーリーが展開されることを期待するしかありません。続きが非常に楽しみです。

  • まとめ

 以上。ゲーム好きでラブコメ好きは必読です。

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