十二国記の4作目は、3人の少女の物語でした。
1人は公主からの失墜を恨む少女――祥瓊。彼女は自らと同じ齢の少女が景王となりちやほやされることが許せず、簒奪するために景王に会おうとします。
1人は蓬莱から海客として漂着した日本人の少女――鈴。彼女は言葉も判らず苦労を重ね縋りついた仙には長年虐げられており、自らと同じ海客の景王なら自分を助けてくれるだろうと景王に会おうとします。
そして1人は、景王の在り方に悩む少女――陽子。彼女は自らの周囲にいる官吏の顔を伺いながら良く知らない国を統べるのに不安と不満を覚え、景国を知るためにとある里に身を寄せます。
この悩める3人の少女がの運命が次第に絡んでいく道のりは実に読み応えがありました。
祥瓊が狭かった視野から出会いで盲を啓かれる成長を見せれば、鈴は漂流した我が身の不幸から自分の力で抜け出そうとせず受け身で嘆いただけからとあることから怨みに囚われてだからこそ積極的に動くようになり結局としては人としての成長を見せます。その成長の過程で、”同年代の少女の景王"への見方が鏡のように遷っていきます。それは実のところ民もそうであり身勝手な願いの押し付けで、しかし直接王を知らぬ身としては当然のことです。
初詔――国をどうしたいかから決められない陽子は自分の振る舞いがどう見られるかに神経質となり――そしてその神経質さが己が王となる前の少女の悪癖であり、そこから抜け出そうと"自分"で気が付きます。だから彼女は3人の少女の中で最初に成長のきざはしに立ち、そして祥瓊・鈴らが陽子に会ったことをきっかけに最後に成長を見せます。
この少女たちの相互作用が本当に心地よい。歴史に翻弄されるのに抗い、歴史を作る――とはこのことかと。
これまでの4作では一番好きな作品でした。
以上。新刊に向けてどんどん読んでいきましょう。
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