Fate/stay night Heaven's Feel I.presage flower 雑感

 そんなわけで初日に舞台挨拶付きで観てきました。
 密度の高い映像で2時間があっという間。凄いアニメ映画ではありました。劇場で見て損は全くありません。


 ……好きか嫌いかで言えば、まあほら、空の境界といい、UBWといい、型月のufotableのアニメって私は好きじゃないので、その延長線上でした。
 なんで好きじゃないかを語っても面白くないので割愛。


 以下、あまり力強く語る気はないのでちょっとだけ内容について触れてみます。

  • 舞台挨拶

 昼からの回だったのですが、本編の前に舞台挨拶がありました。朝1のやつですと本編後だったのでネタバレアリで、歌も歌ったりとテンション高かったようです。しかし前なので、『これから楽しんで観てね』的な感じで終始し、いまいちでした。 

  • 冒頭

 スタートは1年半前。桜が士郎邸に通うようになった契機から始まります。
 瞳の色が消えた儚げな少女がちょっとずつ家事ができるようになり、ちょっとずつ感情が豊かになっていく――。いやー、いいじゃんいいじゃんとのめりこんでからの、セイバールートと凛ルートとの共通をかっ飛ばし士郎と凛が教会に行くまで超早回し。のけぞりましたが、桜の話にはあまり関係がないですし、事前知識が何もない人が観ることはないでしょうから、いっそ清々しくて良かったです。
 

 さて、この改変された冒頭によって宣言されている通り、この作品は本当に桜の物語となっていました。
 一人ただいまと帰る士郎が食事や洗濯やなにげない挨拶といった日常を味わう対象となった桜。
 士郎には今回、剣としてあるセイバーへの憧れも、魔術師としての凛への憧れも生まれず、夢でリフレインする大災害を何度も見つめ、もう二度と失わないと誓い続けます。
 その象徴が桜という訳で。
 これまでのプレイの記憶と知識を放り出せれば、桜は献身的な後輩キャラとして眩いのではないかと。そしてそのためにはただ家に食事を作りに来るだけでは強度が弱いので、冒頭の1年半を見せて、なんでかわからないけど、桜もまた士郎に救われたのだと知らせたのでしょう。
 士郎はごくわずかな人間的な欲求の上に非人間的な覚悟が山盛りの、割合を間違えた異常者なのですが、桜がピックアップされることで、人間味の方に少しだけ執着が振りかけられます。
 ここにおいて助走は十分で、少年は正義の味方になるため、正義の味方となりえたかもしれないifと異なり贅肉が多いと知らず飛び出します。
 目をかけられた桜は自分だけのヒーローが手に入るかもしれないという欲望の蓋が開き、聖杯戦争はより一層酸鼻をきわめていく――
 いや、改めて体験してみると、このヒーローとヒロインの感情のもつれと聖杯戦争の崩れのアンバランスを物語として成立させた手付きは恐ろしいですね。
 2章、3章とどんどんと2人が壊れていく様が映像として観られるのは本当に楽しみです。

 
 あと桜の物語になっていたなと感じたのは2点。
 一つは暗い蔵での桜のモノローグ。凛の特別な物語として士郎に語られてしまった、どうでも良い走り高跳び。それを桜はとうとう己の物語として士郎に伝えることが出来ました。――特別とずっと想っていました、と。
 もう一つは淫夢。悪いことだけどエッチい夢を先輩に見させて誰が出てきたかどきどきして聞いたら凛が出てきたと知ってげきおこぷんぷんというあれ。なんと凛から桜へと途中で変わってしまいます。性的欲求を吐きだしたいと想っているのは誰か――という応え。こういう改変を持ってきたのなら、桜に誰が出てきましたかと聞かせて顔を赤らめる萌えイベントを持ってきたら大幅好感度アップでしたが残念。


 そして個人的に一番のお気に入りの表情は、廊下で凛にプリントを拾ってもらった桜が顔を赤らめて凛を語る士郎を見て「ちっあのクソ女め」と顔を顰めたもの。最高でした。

  • ライダー

 空中殺法をよく映像に落とし込んだと思います。
 セイバーに振り回されてワンパンKOは吹きましたが。……なおここでの敗北が、ラストのセイバーVSライダー戦アゲインでのリベンジに繋がってくるのでさりげなく重要な戦いでもありました。
 でも大体においてエロ格好良いお姉さんでした。対アサシン戦の戦闘シーンでのおっぱいは眼福の一言。

 浴衣セイバーが新鮮で素晴らしいとか、「シロウ」という呼び方のシーンを強調されていて後半への伏線があったとか、対ライダー戦で最強のサーヴァントらしさを見せたとかありますが、とりもなおさず、あの虚数空間での一コマが大好きです。
 あれは原作にはなかったと思いますが、実に良かった。
 Fate/stay night Realta Nua vita版の雑感で"例えばセイバールートで、セイバーが教会地下で言峰に聖杯は要らないのか聞かれ、「そ・・・それは」と一瞬揺れるのですが、最初の「そ」の響きに醜さが出ていました"と書きましたが、今回もセイバーの執着と言う醜さが現れていて愉悦の笑みを浮かべてしまいました。
 聖杯を見つけ無様に泳ぎ出すセイバー。後ろからする、反転した自分の説教の声。いやあ、醜い醜い。セイバーオルタのエロ可愛いと合わせて興奮が有頂天でした。

  • アサシン

 FGOで良い人らしさが出過ぎて幻惑されていましたが、本性はこっちでしょう。
 下衆・外道、しかして/だからこそ殺すもの――暗殺者としては卓越していました。対キャスターとかまじ非道ですが、実に効果的でした。
 あと妄想心音の映像は格好良かったです。あの一枚絵をこう動かすかーと感嘆しました。

  • 音楽

 主題歌「花の唄」最高でした。

 もうこれは桜の歌どんぴしゃ。

 季節が行くことを忘れ
 静かな水底のような
 時間にいた

 からの

 戯れに伸ばされた
 貴方の手にしがみついた
 諦めていた世界に
 やがて温かな灯がともる

 はー、尊い
 ――剣を失ったヒーローが雪の中立ちすくむ最後に残った日常の宝物を見つけ、
 ――壊れゆくヒロインが失いたくないヒーローを無性に待ち続ける。
 そのEDに流れる歌として最強。
 Aimerの凛とした声の張りつめた歌い方もあり、ずっと聴いていたい歌でした。

  • 全体を通して

 以上。別に好きじゃないですが、観ていて楽しめたと思います。2章・3章も早く観たいですねー

  • Link

OHP-劇場版「Fate/stay night Heaven's Feel」| 2017年10月14日第一章公開