風の海 迷宮の岸 雑感

 麒麟として生まれる前に蓬莱に流され人の子として育った泰麒は10年後に蓬山に帰還する。彼はそこで王を選ぶ麒麟としての生き方に悩んでいく――

 十二国記の2作目。時系列としてはエピソード0「魔性の子」の高里が10歳ごろに神隠しに遭っていた時です。
 高里/泰麒は人の子としての時間が長すぎたのか、麒麟の姿に転変できず、妖魔を祈伏できず、王を知る天啓がわかりません。優しい女官に囲まれ、誰よりも慈しむ女怪に庇護され、蓬山の自然に浸っても、極近い決断の日に自分が準備出来ていないと、本当に麒麟として生きていけるのかという恐れにさいなまれます。
 そんな彼がいかにして真に麒麟として目覚めたのか――という成長譚になります。
 非常にストレートな作りですが、シリーズとして特殊な設定である麒麟の在り方をなり切れない存在から書いて、そういうものだとするっと受け入れられたと思います
 ただ問題なのはあまりにも素直でとんとん拍子に行ったこの泰麒の成長の先に待つものを読者は知っているということで。
 泰麒はこの後、再度蓬莱へといなくなります。
 なぜ蓬莱に行くことになったのか、そして再度戻ってきたときに何が起きるのか――そう、これからシリーズに何が起きるのか、非常に気になるところです。

 以上。どんどんと再読していきましょう。

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