よふかしのうた2 雑感

 夜に生きることを夢見る14歳の少年・夜守コウが吸血鬼の少女・ナズナと過ごす密やかな夜の物語の第2弾。
 1巻で既に少年の心を見事に打ちぬかれたのですが、今回もまた相変わらずかそれ以上にキレキレの芸が発揮されていました。羨望するような夜への傾倒の強度が進むにつれて増しているのは凄いことで。ちょっとした仕草や何気ないやり取りからそもそも吸血の意味まですべてがあまりにも鮮やかで、どうしてここまで描写される解像度が高いのだろうか、というレベル。
 
 吸血鬼になる手続き――吸血鬼に恋をした状態で吸血されると吸血鬼になる。
 だから、毎夜試されます。今ここの胸の高まりは、恋なのか、と吸血されることで判定されるのです。

 kindle No.88)

 そもそものその設定を疑うことは出来るのですが、少年が生理的に反応し七面倒なことを考えて悶々と悶える様は滑稽で真摯で、茶化すことにためらわれる眩しい姿でした。

 その試し試されだけだと息がつまるのですが、基本的には夜を楽しもうという姿勢には変わらず、コウとナズナ以外にも徐々に夜の仲間が増えていきます。
 前巻でも出た幼馴染の少女・アキラと同じ布団を共にするエピソードがまた良いんです。アキラの着替えとかのふえっちぃ描写や友情を感じさせる会話とか素晴らしい上に、オチが見事。眠れず夜の世界に入ろうとした少女が心穏やかになるということは――夜から朝へと眠り起き、当然再度明るい世界に舞い戻ることになります。それが正しい道に還るのか夜の世界から弾き飛ばされるのかのいずれかに感じるのはともかく、困ったらコウとナズナと共に夜を過ごせば良いのだという日常の希望になっていました。
 そのエピソードの後で、ナズナが添い寝屋をやっている際の客である雑誌編集者の24歳の女性が訪問する話があり、その新キャラと展開がですねえ、これまた本当に最高なんですよ。これでもかと言わんばかりにフェチ回路がぎゅんぎゅんぶん回されます。もう読めとだけ。
 描写からはこれからも更に登場人物が増えていきそうで、それが更なる興奮に繋がるに違いないという信頼感の元、先が本当に楽しみです。


 以上。このシリーズにはぞっこん嵌りました。

  • Link

 WEBサンデー|よふかしのうた■コトヤマ

 

 <既刊感想>
  よふかしのうた1 雑感