織田信奈の野望 感想

 戦国武将が美少女になった世界に飛ばされたスケベな男子高校生・相良良春が回避能力と拙い知識で生き残って行くという一見アレゲなお話なのですが、予想外に良かったです。仕えるにたる主君の下で自分の立場を確立し、出来る範囲で手助けする歴史修正物の面白さは本物でした。

 「相良良春。わたしを主と仰ぎ、忠誠を誓いなさい」
 (略)
 「ああ。絶対にお前を裏切らない。お前の夢を叶えてやる」
   (P178-179)

 彼が偶然仕えることとなった主、織田信奈。彼女は織田信長に被る生い立ちをし、斎藤道三との会談や弟の信勝の謀反、そして桶狭間の戦いといった出来事に遭遇します。そこに居合わせた良春はゲームなどで得た知識でより良い方向――信奈が魔王と恐れられる破滅的な道に進もうとするのを阻止しようとします。
 その方法が基本的には信奈への働きかけに終止しているのが良かったです。あくまで中心となっているのは信奈であり、良春は補助として働き、しかも知識を振りかざして意のままに操るまではいかないのは良い意味で節度がありました。それに信奈がカリスマ性のある君主としてそれなりに書けているために、中心となるのに不自然ではありませんでした。
 良春はヘタレず、へこたれず、曲がらず、補佐型の主人公として最高でした。目的が偉くなって美女を侍らしてうはうはというスケベ心からぶれず、また徐々に信奈への忠誠が加わってくるのが見ていて手にとるように判り、心情にシンクロ出来ました。

 
 他の美少女武将の造形もよく出来ていました。ツンデレ平安風美女の今川義元眼鏡っ子の松平元康、巨乳で忠義深いがバカの柴田勝家素直クールな犬千代、無邪気で天然小悪魔なロリっ娘ねねetc、誰もが見せ場があり、存在感がありました。
 特に犬千代は素晴らしかったです。信奈に仕え、主人公と共同で仕事をする最中に見せるクールで熱く義理堅い性格や、ロリな身体で精一杯戦う姿は非常に好みでした。それに、とある事情で逐電し再登場するのですが、逐電中に犬千代――つまり前田利家である彼女はかぶき、そのかぶき方が何とも言えず可愛かったです。


 文章は複数の主観客観が入り乱れるラノベ文体でお世辞にも上手いとは言えません。けれども、ふとした外せない瞬間には必ず良いシーンを演出しています。しかもみやま零さんの存在感のある美麗な挿絵と合わせて読むと不思議としっくりきました。

 
 さて、今後の展開としては明智光秀に相当する人物が登場して本能寺の乱を乗り越えるのがシリーズのピークになりそうな予感がするのですが、如何。


 それでは次巻以降楽しみにしています。

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