アオのハコ 1-6 雑感

 中学の時から猪股大喜は一つ年上の鹿野千夏に恋をしていた。大喜は男子バトミントン、千夏は女子バスケと体育館での部活の練習でしか顔を見合さない筈の相手だったが、高校生に上がるとひょんなことから彼女が同居することになった――

 ヒロインが親の事情で引き取られて嬉し恥ずかしの同居生活へ――そんな古式ゆかしい少年漫画のラブコメらしい出だしで始まる、ジャンプのラブコメ。年上の千夏に恋を抱いてその反応に一喜一憂しつつ、同級生の新体操部のエース候補・蝶野雛とも仲良くなり思いを寄せられていくという三角関係がラブコメの基本ラインで進んでいくのですが、どろどろしたところを感じさせない爽やかな作風でした。
 それというのも主な視点人物である大喜のキャラクタが嫌みのない真っ当な青春小僧としてまとまっているので、引っかかるところがなくこれぞ青春の時間というものを楽しめたのです。
 汗水たらしてバドミントンを上手くなろうと努力し、ライバルである先輩に勝とうとはりきりながらお世話になるところはお世話になる先輩後輩の関係は心地よく、憧れの千夏先輩は大人っぽくて人気者だけど自分のことを結構思いかけてくれてその言動にどきどきして、ストレートに感情をぶつけてくる雛は気の置けない同級生としていいやつだ、と。描きたい人間関係、描きたい風景、取り上げたい感情の描き方が上手いからこそ、受け取る読者としては素直にその心地よい漫画の空間に浸ることが出来たと思います。 
 その上で物語が展開していき、今がラブコメで一二を争うイイ時期なので、読んでいてにやにやが止まりません。

 ラブコメの醍醐味として魅力的なヒロイン――可愛い、綺麗、大人っぽい、清楚、親しげ、etc――が大事なのは言うまでもありません。ただ個人的にどんな心情が一番見たいかと言えば、これにつきます。――恋をする瞬間を観たい、と。
 男子が主人公であれば魅力的なヒロインを魅力的であると判って、だからこそ惹かれて恋をしていくことへの強い説得力があると、めっさもののあわれを感じます。
 そして慕って、求めるからこそ、わからないこと――恋をした相手のヒロインが何を考えているかの隠し方と表し方が上手ければ上手いほど、そのわからなさに翻弄されるのがすっごい愉しいんですね。

 それで、この『アオのハコ』はヒロインが大喜に惹かれていく描き方が抜群によくて、もうラブコメ万歳という感じで大好きなんですよ。

(3巻、No.18)

(6巻、No.45)

 ひとりだけでなんとかさせないし、頼らさせてくれる――同級生の雛が、そして主人公からは年上で立場があまりにも違うから分かりにくいとされる千夏が、大喜をいいなと感じて、そのイイなが大きくなっていく過程があまりにも自然で、あまりにも思春期の恋として綺麗でした。


 以上。これからヒロインが増えてきて下手にぐだったり、鞘当てが出てくるとなんか嫌だなあと怖いのですが、きっと面白く描いてくれるだろうと期待して読み続けていくことにします。

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