生徒会で行う演劇は本番が差し迫り、練習もラストスパートに入った。その最中、未定だった脚本のラストが様々な人間の葛藤の末、決まっていく。それは演じる役者にとって不快な変更で――
才色兼備な生徒会長・燈子が感情のフラットな少女・侑に一目惚れし迫る出だしから始まった百合漫画。美麗な絵と心に染みる心理描写でこれぞ理想の百合漫画だと巻を重ねるにつれてぞっこんに惚れるようになったシリーズももう5巻目。
これまでの4巻において、燈子からの一方的な恋愛感情によって、侑にも恋愛感情が芽生えていくようになってきました。
詰まる所、恋愛関係の構築が起きているのですが、そのある種前向きにラブラブするようになっていっている過程の奥深くで、燈子にとってはよろしくない事態が進行していました。
重ね重ね言いますが、これまで彼女は己の愛情の偏りを自覚していたのですが、そのひとえの愛情こそが侑に潤いを与え、求めなかった侑からの愛情の応えをもらうようになっていきます。その応えは求めなかった以上に、彼女の理想を裏切るものであり、彼女の心の蓋を否応なしに切開しようとします。
侑の愛情の返しは、自分を愛してくれた燈子の本当の姿を知りたい――という当たり前の愛なる想いを抱きました。これは当然のことではあるのですが、ただ燈子にとっては不都合極まりありませんでした。
自身の本当の姿は燈子は露わにしたくなかったのです。
というのも、燈子の才色兼備さは亡くなった姉を理想として追い求めて作り上げた像であり、彼女はそうあるように自分らしさを抑えてきたのですから。
燈子の独自性にして、理想像にとっては唯一の疵が侑への愛情であったという訳ですね。
こういった心理描写にきゅんきゅんしない筈がなく。
そして演劇によって、燈子は燈子のような人物を演じ、侑は侑のような人物を演じます。
合わせて侑は脚本のラストに助言をするような立ち位置にあり、侑が願うような燈子の応えを、燈子は演者として演じなければならなくなる――というのが本巻の流れ。
この持っていき方が本当に上手かったですね。
それは燈子にとっては全く本意ではないかもしれません。
(やがて君になる5、P140)
けれどもこれから仮初めの結末を演じることで、劇外でどう振る舞うのか。
これからの巻で、それを読むのが本当に楽しみです。
なお、シリアスなところだけを取り上げてもなんなのだ。
最後にこの一コマを。
(やがて君になる5、P95)
――休み中にこっそりとデートに行った2人の秘密の空気感。
ちょうすきです。
以上。次巻は秋。待ちきれません。
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やがて君になる3 雑感 - ここにいないのは
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