アクタージュ 1-5  雑感

 夜凪景は演技の内面を自己で追体験する"メソッド演技"を独学で身に着けていた。しかしその演技は観る者の心を揺さぶるものの、誰にも抑えの効かない劇薬だった。
 役者として生きるために、夜凪は演技力を磨いていく。
 そして、やがて彼女は自己の演技を完全に他者からの視点で規定する化物に出会うーー

 
 役者を題材に取り上げた漫画。
 読む前はどう料理したのか心配ではありました。
 しかし演技方法を技とし、主人公とライバルらは役/演技をぶつけ合う――メソッドとしては見事に少年漫画に則っていました。
 ただ勝負の目的に対人勝利はなく、対決は映画/演劇/CMなど作品が在るべき姿として出来上がる道筋です。作品が完成しなければ誰にとってもの敗北であり、対峙しながらお互い高めあっていくことになります。
 主人公・夜凪の異常な特質、当代きっての若手女優の人間をやめた化物加減、演技力随一の男優の夜凪に類似してより先鋭化された演技などなど。どの役者らも磨き上げた自己で虚構を演じることをもって、共演者、舞台、観客を巻き込み、一つの作品の完成へと止揚していきます。
 それら準備/修行、演技/対決、作品の結実のどれもを鮮やかに描いており、非常に惹き込まれました。


 ここで漫画/絵として演技を見事に描けていたのが大きなプラスポイントでした。
 表情・背景とで、素と演技、日常と舞台、その移行する端境の曖昧さを含めて表現しえていたのです。


 題材の処理の仕方と漫画としてのレベルの高さによる作品内作劇の達成は、最新刊の5巻で一度結実します。
 舞台――『銀河鉄道の夜』。役者の鬼と、監督の鬼とが入念な準備で作り上げた一幕。

 「ああ」
 「カムパネルラ」
   (5巻 No128-130)

 の言葉を合図に深まっていく、虚構の具現化。
 素晴らしい舞台と、見事な演技に魅了される観客、それらを俯瞰して理解する読者をもって完成する芳醇な読書体験となっていました。


 ここに殻を破れない役者がどうエッセンスを垂らすのか――が以降の見所になっていき、より演技の深化・多様化が生まれ、まだまだ目が離せない展開が続くと予測します。
 ただ少なくともこのシリーズを読み始めたのであれば、現在最新の5巻まで読んで評価して欲しいところかと。


 今後の期待としては、役者の演技を観た観客の反応で言葉が多い気がするので、そこを減らして、より絵だけで伝わる――コントロールしてくれるようになると良いかなーと思います。


 あと最後に百合。
 主人公――"異形"夜凪景×ライバル――"化物"百城千世子。

 (2巻 No73)

 事細かに説明すると野暮になりますので言いませんが、俗に言う"感情がでかい百合”でした。
 夜凪が百城を仰ぎ見て成長すればするほど、百城は丹精込めた自分を壊して新しくなっていく――その連理がこれから更に深まっていくかと思うとどきどきしますね!


 以上。良い作品です。幸せに続いて、幸せに完結することを願っています。

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 OHP-『アクタージュ act-age』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト