うたわれるもの 二人の白皇 感想

 大国・ヤマトは帝亡き後、重臣ライコウが偽りの姫を帝位につかせて、国に仮初めの平穏を取り戻そうとしていた。
 しかし偽りの仮面をつけた『オシュトル』は正しき姫のどれほど血が流れても父たる帝を継ぐという意志を元に、ヤマトに反旗を翻す。
 遂に国を二分する大戦乱が始まった――


 ということで、時系列的には『うたわれるもの 偽りの仮面』の直後にあたるシリーズ三作目。ジャンルは同様にシミュレーションRPG
 

  • シナリオ

 大筋としては、亡国の姫を担いで王座の復権を目指す――というもの。
 敵は大国を背景とした稀代の戦略家。小国から始まり、人を集め、物資を集め、対等の大戦へとようよう持ち込む艱難辛苦の旅路となります。
 つまるところ架空戦記の王道を堂々と駆け抜けました。
 自分はそういうのに小細工など求めないタイプですので、大いに良しと高く評価したいところです。
 難点としては、『敵を見逃す→しまった』という展開が重なるのでそこは興ざめでした。

 
 古代ファンタジー風味世界に遠未来SFガジェットをぶち込む手法もよくあるのですが、本作では唐突ではあるもののなかなか上手く決まっていました。
 ああいう流れで、まさか気象衛星をぶち込むとは。


 さて、偽りの仮面――名将の名を騙る苦難。
 影武者が表に出ざるをえなくなるタイプの物語としてもど真ん中剛速球という感じ。
 あまりにも名声があり、かのように振る舞うコストが高すぎる仮面をかぶり続けるため、

 そう繰り返されます。己に言い聞かせるように、他者に宣言するように。

【オシュトル】「某はオシュトル……それ以外の何者でもない。」

【オシュトル】『ヨウヤク思イ出セタ。』
【オシュトル】『某ガ何者デアルベキカヲ。』

 大義と恩義のため自分を殺し、望まない名声と人望を譲り受け、騙られた人物が求めた正しき王朝の再建を成し遂げていく。
 それは精神的にも肉体的にも血反吐を吐きながらなされた、偉業です。
 ただそこで失われていくものを愛したひとびとがいた――というあたりに生まれる物語はありきたりではあるかもしれませんが、強く心を揺さぶるものがありました。


 そしてこの立ち位置を譲り受けた偽りの仮面という在り方がクライマックスで根幹に関わってきた際には膝を打ちました。ミクロとマクロの問題における主題の重奏の仕方は巧みでしたね。


 そんなこんなでシナリオ全体としては大変満足が行く出来でした。
 

  • ゲームシステム

 『うたわれるもの 偽りの仮面』の感想でも書きましたが、なかなか練られていました。
 隣接する範囲に特殊効果を発揮する特性のシステムがタクティカルRPGとして奥行きを深くしていました。

 のような味方の数値を上げるバフは元より、周囲を通る際に敵を釘着けにする特性のデバフも味方敵両方にあるため、移動と立ち位置の思案に妙がありました。また釘着けにするデバフを避けるバフみたいな掛け合いもあり、それに合わせて戦闘キャラもアクションをするため画面が大変動的であるのも見応えがあったと思います。
  
  
 なお難易度普通、演習によるレベル上げなし必須戦闘のみで、ラストバトル前のレベルは平均37ぐらいに達します。それで十分クリア可能なので、レベルデザインも良かったと思います。
 プレイ時間は25時間とちょっと。前作が15時間ぐらいだったので、まとめると丁度いいぐらいの長さかと。
 

 初っ端のシナリオにおいて評価したいと言いましたが、実はそこに大きな担保があります。
 というのも担ぐ姫君のアンジェがとにかく魅力がない。
 わがままな姫様として登場し、シナリオが進んでいくにつれて精神的に成長して立ち位置が変わっていくのかなーと思いきや、ところがどっこい。結構最後までアホウなままです。ほいほい危険な所に行きすぎなのはキャラを出す上でしょうがないでしょう。しかし最後の方でも強大な敵にいきなり切りかかるわ、『オシュトル』に渡された謎の仮面を突然奪い取って自分の顔につけるわとやりたい放題です。そういうアホなムーブをするキャラもいてもいいのですが、それで担ぎ上げるカリスマがあると言われてもほんとー?と疑問になったりならなかったり。
 や、正直心情的には根本に関わる、かなりな減点です。ただそれでも、それでもシナリオは良いと言いきってしまいましょう。


 最も好きなキャラは双子のウルゥル・サラァナ。
 「すべては、御心のままに」という台詞を繰り返す忠実な従者たち。
 控え目な挙動と、隙あらばまとわりついて肉欲を煽りたてたりするアタックとが良い具合にバランスが取れており、かなり魅力的なキャラに仕上がっていました。
 あと声が好みでした。普通の台詞の平坦な抑揚も聴いていて良かったですが、特に

 まわり まわり まわる まわる まわれ まわれ
 ゆらり ゆらり ゆられ ゆられ ゆれる ゆれる

 という必殺技の台詞がリズムと合間って非常に耳心地良かったです。
 まあ最大の決め手は最後の最後。様々な感情が籠った、祝福。あれを見てしまったら一番好きにならざるを得ませんでした。

  • まとめ

 以上。原初たる『うたわれるもの』ほどの興奮は覚えませんでしたが、良い作品でした。その後のトゥスクルは見たいので続編待ってます。
  
 

  • Link

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