パシフィック・リム 感想


 観る前からロボット物として大いに期待していたのですが、その期待を裏切ることはありませんでした。
 太平洋の海底の裂け目から異世界の怪獣が来襲するのをロボットに乗って撃退する――という夢を大真面目に、大掛かりにやってのけました。


 ロボット――複数人のシンクロした騎乗により自在に操縦できる"イェーガー"。外観は基本的には無骨で、世代を上げるにつれてある程度は洗練はされるのですが、やはりどこかごつさが残っています。印象として近いのはアーマードコアの機体ですかね。操縦方法はシンクロ/精神をシンクロして走らせながら、機体内で取る行動と同じ行動をイェーガーは取ります。そのため戦闘用スーツを着込んで神経接続されるのですが、このコックピット内での人物の振る舞いの格好よさがまた素晴らしい。薄暗いコックピットの中、モニタやボタンの電気が照らし、2人は並んで、走り、拳を構え、拳を突きます。そのシンクロ具合が見事です。それに手足を動かす都度、ガシャッ、ガシャッと接続部位が鳴るのがまたメカニカルな良さがあります。
 そして武装。初めから出しておけというような安易な大逆転技はありません。戦法は叩いて叩いて叩いて弱らせるのが基本です。弱らせた機会に乗じて、破壊力は抜群だがと隙が多く、外すと後がない、固有の必殺技を繰り出すのです。たとえば『プラズマ砲』とか、『エア・ミサイル』とか、『ハンマー・パワー』とか。この、何時必殺技を出すのかの接近戦の機微が非常に楽しいですし、機微の前の段階としてロボットが攻撃するだけでも見ていて眼福の光景が展開されます。船や倉庫をつかんでぼこぼこ殴るをちょうリアルにやるのは心が躍るというものですよ。加えて肘のブースターを点火させた"エルボー・ロケット"とかやられちゃうのだから、もう悶えて観るしかありません。極めつけは怪獣に鷲掴みにされて大気圏まで運ばれ、打つ手がないと思われかけた矢先の新武装。大事なことなので2回言いますが、新武装が用意されていたのです。
 表示される剣の赤いシンボル。傍には"Sword"の文字。
 押すと蛇腹のような構造が突出し、ソードへと形態が変形。そして一閃。
 ……ああ、なんて、無骨で美麗な。
 リアルな騎乗するロボット物の醍醐味を味わいすぎてマジ絶頂です。眼が、胸が、心がこれを待っていたと叫んでいました。


 はたまた怪獣。『カイジュウ』という単語が飛び交うあたりで「お主、好きよのう」という感じなのですが、置いておきましょう。
 造形は生物を基本にしたらしいので、今までの歴史的な怪物の文法を踏まえたものになっていました。攻撃は容赦なく、精神が理解不能であり、生き汚いので、敵対した時――付記すれば複数個体と――の絶望が伝わってきました。なので設定としては正しかったかと。黒幕とかはどうかと思いますが、ああいう単純なのが解りやすくていいんじゃないですかね。
 

 ストーリー。喧嘩強いだけの男が一度は逃げて再戦する、プライドだけは高いパイロットが突っかかって来る、自分の実力を認められないツンとしたヒロインと同乗する――ええ、これこそがロボット物の王道を貫き通します。シチュエーションも見事の一言。戦闘前夜、巨大なロボットを前にして夜の霧が近寄る中、ヒロインと語り合うとか、どこまで解っているんでしょうか。
 まあ、あれです。何せ、主人公はヒロインと向かい合わせの部屋。覗き穴からヒロインは覗くは、着替え中の半裸を見るわとやりたい放題してくれるのだから、全てをありがたくいただくしかないでしょう。


 以上。実写ロボット物の傑作。ロボットが好きなら劇場で見ないのはおかしいとまで言い切りましょう。

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