レビウス 2感想

 本作は機械化された人間同士が闘う"機関拳闘"が広がった近未来を若い機関拳闘家レビウスを主人公に描くシリーズです。レビウス1の感想はこちらで、レビウスが"最大の敵"A・Jを目の当たりにした所で終わっていました。この巻では機関拳闘Grade1昇格戦としてA・Jとレビウスが対戦することになり、A・Jの情報が徐々に明らかになっていきます。
 まずは儚げな少女の姿でありながら圧倒的な腕力を揮うことを、場外乱闘の末に機関化された右腕を潰される返り討ちに合って実感します。前巻で示さているのですが、レビウスの右腕は医療用の義肢で神経が通っているために、機械化された右腕の痛みは脳にダイレクトに伝わります。そのため潰されることで激痛で死ぬぞと脅されるのですが、その痛みとともに少女の力を少年は心に刻んだのです。
 次に力が推測される後に、A・Jがどのような機関拳闘家なのかというバックボーンが"敵"の宣戦布告によって宣言されます。彼女は闘うことにのみ特化してチューニングされた存在であり、余分なものとして声帯まで取り外されています。人間をどれぐらい止めてしまっているのか解らないとされ、勝ちを叫ぶことも、負けを哭くことも最早禁じられています。
 悪意ある意志に設計された機械の身体と機械の出力を知ることで少年の中で少女の外見のインプットは終わり、残されたのは封をされた内面だけ。言葉で語られない心は外から解釈するしかありません。そしてまあ、少年は最初から閉ざされた少女の『声』を聴いていたのです。
(P33)
 声を出せないと知る前に『声』を聞いてしまったのなら、後やることは一つで。機械拳闘を選んだのか、機械拳闘に選ばれたのか判らぬままその道を走って行ったのと同じ様に、少女を想い、突っ走っていきます。例えば力で圧倒されているために打倒するための腕を得るのですが、それは自分の血を力に変換するという諸刃の刃が極まったものでした。使用時間も厳密に決められてしまいます。
(P136)
 しかしこれでないと少女に届かないのであれば、付けるのも使うのも躊躇いが入る余地はありませんでした。
 そして少女に対峙する心が決まり、生かすために倒す『力』を得て、敵と自分の力の両方から殺されるかもしれない試合前の畏れを前にして、少年はこう嘯きます。

「これが、機関拳闘なのかもしれない」
   (P174)

 少年が機関拳闘を選んだ理由とか何もかもがここで収まるように収まったとも言えましょう。待望の少女を前に、少年は己を知る――というのは、これまた美しいお伽噺ではないですか。
 あとは不純物無く少年と少女が相対する試合が始まるのですが、そこから先は読んでのお楽しみと言う感じ。


 そんなこんなで、少女と少年の邂逅ではあるのですが、言ってしまえば全編において暴力について語られるのでした。なぜ揮うのか、どう揮うのか。1巻でも静かな筆致乍ら暴力を題材にした荒々しさで満ちていたのですが、この2巻ではそれ以上に暴力にまつわる魅力が暴力的に描かれ甘美な味わいになっていました。キャラクタと設定と絵と台詞と全てが高度に融合してある目的に奉仕する、本作のような作品は傑作としか呼ばないでしょう。


 以上。前回の感想の言葉を繰り返しますが、迷わずお薦めする逸品。是非ご一読を。

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レビウス 2 (IKKI COMIX)
レビウス 2 (IKKI COMIX)
posted with amazlet at 14.05.10
中田 春彌
小学館 (2014-04-30)