あせとせっけん 1-4 雑感

 舞台は化粧品・バス用品メーカーの経理部勤務の八重島麻子は子供の頃から汗かきであることがコンプレックスで、制汗剤と消臭剤が手放せなかった。自社の新製品を楽しみにしながら地味に暮らしていたが、商品開発部のプランナーにして匂いフェチの名取香太郎ににおいを嗅ぎつけられてから彼女の毎日は大きく変わり始める――

 これぞと言わんばかりのザ・ラブコメ
 個人的には社会人物ラブコメのトップクラスに躍り出ました。

 体臭を気にするヒロインの体臭を只管に嗅ぐというシチュエーションはデリケートな題材ではあるのですが、軽やかに男女が好いたはれたの一環のラブコメに組み込まれていき、変なえぐみは感じませんでした。
 それから初めてのセックスの翌日とか、社内恋愛の公表するとかしないとか、昼休みに会議室を借りて社内で2人きりでランチとか、待ち合わせてのデートとか、ちょっとしたすれ違いも含めて、2人の仲が香りと共に深まっていくのをむやみやたらとにやにやしながら読みふけさせられました。
 無駄に強い軋轢や殺伐はなく、只管にほっこり出来る幸せな読後感。
 こういうのを読みたいという作品でしたね。
 

 そしてなにより、そうなによりも大事なことですが、ヒロインの麻子さんが可愛くて可愛くて可愛くて堪らないのが最の高なんですよ。
 性格が良く愛嬌があるけど、コンプレックスによって外に表現されることがなく、誰にも気づかれてこなかった彼女の特質。
 好いた男性に力強く請われることで自分をより肯定出来て自分の欲求をきちんと口にだせるようになったりするなど、彼女は恋した相手の前で魅力を全開にしていきます。
 地味な女性が恋によって華開いていく――その変遷を間近で観られることは読者の特権でしょう。

(1巻 No. 141)

(1巻 No. 205)

 或いは艶やかな面でもそうで、初めてだった性行為に次第に慣れていく様が本当に愛くるしい。性行為はコミュニケーションである――という一つの結実かと。下着の描き込みや脱がせ方、体位などと合わせて、本作の性描写は見物です。
 それに初めて一緒に入った温泉で彼女の体の洗い方をまじまじと観察するとか、カップルのちょっとフェッチい恋人ノリを嫌味なく描けるのは褒めたたえたい才能です。


 以上。個人的に大好きなシリーズになりました。ラブコメ好きには迷わずお薦めします。

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