不思議のひと触れ 感想

 スタージョンの既読作品はハヤカワSF文庫「人間以上」、河出文庫の「海を失った男」のみであまり熱心なフォロワーではありませんでした。特に「海を失った男」は今ひとつ理解しきれない所があり、好んでいるとも言い難い作家でした。
 しかしこの短編集を読むことで好感度が急上昇しました。科学的なワンダーを提供するタイプのSFではないのですが、奇妙な設定と展開はSFとしか言いようがないセンスに満ち溢れていました。
 それに極上のボーイ・ミーツ・ガールが多くあったので堪能しました。「不思議のひと触れ」「閉所愛好症」「孤独の円盤」といった短編がそうなのですが、以降はこの題名を口にするたびにその輝きを思い出すことになるでしょう。「不思議のひと触れ」はあまりにも奇妙で美しい出会いに、「閉所愛好症」は……えーと、都合の良さに、「孤独の円盤」は痛切な叫びに。
 この作家はスタージョンの法則スタージョンの啓示など有名な言葉があるのですが、表題作の定義も見事でした。


 「不思議のひと触れ」―― A Touch of Strange。


 P129において説明される意味と、短編を通した具体例に胸を衝かれました。そして、こういった作品を私は求めているのだろうと。


 各短編ごとの感想は以下の呟きを参考してください。
 恐らく見落とした部分が多いのでしょうから、「海を失った男」をいつかは再読したいですし、他の短編集にも手を伸ばしたい所です。まあ、多分遠い先になってしまうでしょうが。



海を失った男 (河出文庫)
シオドア スタージョン
河出書房新社
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