終わらない歌 雑感

 『よろこびの歌』から3年後を書いた小説。
 一直線の綺麗なだけの未来は当然のように待っていませんでした。
 御木元玲は音大で自らの歌を信じられなくなり埋もれていた――ばかりか、歌で同級生に光を見せたあの御木元玲がつまらない男に引っかかろうとさえ。
 同級生もまた何らかの屈託を抱え、一度は信じて大事にしたものを大なり小なり疑いの目で見返すことになります。

 そうして、大人になっていく、と。

 そこに詰まらない大人――とつくのかどうかという他の人のまた自分の他と比べた評価は必要なかったと、どのキャラクタでも繰り返されます。自分で自分を受け入れる、自分を好きになる――そして自分の居場所を決めることを力強く謳っていました。普遍的に正しいかは兎も角、ある種の人生への確信は力づけられるものがあるのは確かで。その彼女たちが精一杯生きる奥底で、前作/かつて光り輝いた思い出――共に歌を歌った仲間であることがしっかりと息づいているのも見て取れ、それがまた読んでいて嬉しくなる一因でした。 
 御木元玲を外から見る同級生と、御木元玲と、読者とで最終的に望みが重なることを持って物語が締められるのを寿いで、この雑文を終わりたいと思います。彼女が、歌い光り続けますようにと。


 以上。続刊として良く出来ていました。ただ好みを言えば、前作の方が好きですね。

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宮下 奈都
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