- 感想
舞台は六式島。そこでは六式の家に生まれた少女たちが神の力を下ろして闘う祝祭が執り行われていた。祭りの日には島全体が盛り上がることになる。
だが同日に人知れず六式の下に位置する四相の家の少女たちが闘うことを選んだ。その闘いは六式との入れ替えを意味し、最弱の裏を冠した名前が名付けられる――
単純にまとめてしまえば少女たちが拳で語り合う伝奇格闘ビジュアルノベル。
本祭を描くカーニバル・デイは以前に発売された作品をリメイクしたもので、四式の戦いを描くカーニバル・イヴがカップリングされて神事双劇カーニバルとして発売されました。
・カーニバル・デイ
前述通り、六式の少女たちが神の力を発現し闘い合うのですが、六式の中で唯一対人を行えない家があり、その少女が視点人物となっています。そのために闘えない屈託、羨望が積み重ねが実感でき、目の前で行われる試合を二重の視点で受け取ることが可能となっています。少女たちの日常におけるべたべたしない結びつきも快く、戦闘にシフトすることによる理解の質の変化も青春バトル物として最適に描かれていました。
バトルも意識を断ち切るまでの容赦のない攻撃、神の力を計算に入れた理詰めのやり取り、最弱の覚醒etc、燃える展開のオンパレードで、テンションは駆け上がっていきました。ただ最終戦の餓狼伝っぽい文章は演出にもう少し気を使ってほしかった気がします。
それでも十分なほど熱い、熱い作りでした。
・カーニバル・イヴ
対して四相の少女たちは神の力を発現できません。代理として擬似的な神の力を発現する祭器を纏って闘うのですが、それはアクセス出来ないからこその神への希求であると考えるとデイと美しい対比となっています。
主人公・三桜巴は今回においても裏の祭りの狙われる家――故に裏桜祭と名付けられる――の唯一の生き残りであり、獣に例えられるほど止むに止まれぬ衝動を胸に持つ少女です。そのせいで過去に犯したとある事件によって、攻撃手段である足を封印されています。そうしたハンデを背負った少女が襲ってくる少女たちをいかにして倒すのか、というのが大筋。そこに巴と事件に関連する少女たちとの決着という支柱が貫かれ、これまたバトルとしても、青春物としても格別の作品となっています。
バトルはデイより戦略的な要素が強くなっていて、肉体破壊も原始的な酷さを増しています。
なお「十二月」シリーズのとある登場人物も出てきて、八月につながるという遊びもありました。
・神について
対比について更に語るならデイのラストで神の力の具現を見るなら、イヴのラストでは人の力の具現を見た、或いは十二月が神の構造、ルーデシアが神の存在、本作が神の方法を書いたと言える――などと語れないこともないのですが、まとめきれてないのでまたいつか。
・その他
絵は質量ともに十分で、上田美少女大好き!と言いたいところですが、文章で重傷を負っているにしては綺麗過ぎてギャップに戸惑いました。まあブサイクライクにぱっくり割れた肉を描いてみましたとあんまりやられても嫌なので、厄介な注文ではあります。
音楽は燃えて、静謐で格好良い曲揃い。
以上。拳で語る少女たちに惹かれるなら、お薦めの傑作です。
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OHP-Talestune