星読島に星は流れた 雑感

 定期的に隕石が落ちてくるとされる孤島・セントグレース。隕石が落ちてくるのを待ち、本当に落ちてきたら隕石を誰かにプレゼントするという『集い』に招待された縁もゆかりもない7人。
 本当に落ちた隕石が発見されたとき、事件が起こる――。


 かつてトリックスターズという際物めいた魔術ミステリシリーズを書き上げた作者の書下ろし長編。
 どんなものだろうとちょっとだけ怖いもの見たさで読んだものの、意外にと言っては失礼ですが、意外にも端正な本格ミステリでした。


 ――何度も隕石が落ちてくる島。

「別に狙ってそうしたわけじゃなかったが、俺が島にやってきたのは、以前に隕石が落ちてきたのと同じ――つまり、ちょうどこの時期だった」
「……ということは、まさか」
「ああそうだ。落ちてきたのさ。二度目の隕石が」
 マッカーシーは空を見上げた。俺とアレクも、つられるように上方へと目をやる。晴れ上がった空は、どこまでも吸い込まれてしまいそうなほどに青い。
「兄さん。あんた、そのときの俺の気持ちがわかるかい?驚いたなんてもんじゃなかった。これは現実じゃない。夢だ。そう思ったよ。そもそも隕石落下の瞬間に居合わせること自体が、一生に一度あるかないかなんだ。実際、俺もそのときが初めてだった」


 ――隕石を求める人間に問いかけられる謎。

「もし地球最後の日が来たら、何をしますか?」

 

 ロマンあふれる設定と、夜と星の描写に惚れ惚れし、見えない星座を冠した部屋を持つ館にときめき、本当に隕石が見つかり、さあ何が起こるのかと待ち構え、――起こる卑近な犯罪。
 このミスマッチが自分が追い求めるミステリ、多分新本格とジャンル分けされるミステリらしくて好きでした。
 隕石と殺人事件と言えば名作『乱れからくり』が思い起こされますが、本作はきちんと現代社会のルールで処理され、当然関わるべきNASAスミソニアン博物館も関わってきます。
 探偵役が何でそこまでやるのかという疑問がちょっとだけ作品の強度を弱くしていますがおおよそは無理がない展開でした。
 いまいちだけどまあ穏当な事件の真相を提示した後で驚愕のどんでん返しまで一気に読ませられました。
 オチもキュートですし、愛すべき佳作かと。


 以上。次回作も期待しています。

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