ホームメイドスイーツ 感想

  • 感想

 悲劇的なストーリー展開の「終の館」を連続リリースし、それらに登場し悲劇的な目にあったメイドたちを転生させて学園物にしたのが「ホームメイド」。そして「終の館」を「ホームメイド」にカップリングしてリメイクしたのがこの「ホームメイドスイーツ」となっています。
 題名からしてどこの会社も追いつけない速度で突っ走っているような気がするのですが、ひとまず置いておきましょう。


 本作において日本はイギリスとアメリカに分割統治されています。イギリスに支配された地域では正しいメイドとジェントルになるのが誉であると教育されます。その意識改革は成功し、元々日本で良家だった一族は皆一流のジェントルになり、連なるよう子息たちを学園に送るのでしたとさ。

 なんて見事な、占領――

 家畜人ヤプーも真っ青な受け入れ加減です。現実とは異なる国家体系に至った偽史小説に例を求めると、妄想充足的なシミュレーション物を別にすれば、大概にして占領下でのアイデンティティの確立のために革命しようとする物騒な方向や、或いは現実との齟齬によるメタ的解釈の方向に進みます が、そんなあらぬ方へいかないのがサーカスクオリティ。
 前言通り、もう真っ当に主人公は紳士としての在り方に悩みます。
 そしてその内に前世で別れたメイドたちと再び仲良くなっていくというの大筋。当然のことながら転生には大した意味がなく、恋仲に発展するきっかけぐらいとしか作用していません。そんなこともあったんだねー程度です。
 わざわざ前世が長々と語られたにしてはその時間が軽々しく扱われすぎで、アイディアと作品の性格が合っておらず、全体的なバランスを欠いていました。(ただしC.D.C.Dなどの別エピソードで補強されつつあるとも考えられますが)
 

 と、ここまで色々と揶揄してきましたが、実はプレイ後感はそれ程悪いものではありませんでした。キャラクタの恋愛成就というミクロだけから見ればそれなりの出来です。これは他の作品にも当てはめることができるのですが、キャラクタの性格付けはあざとい癖に、操作する文章があっさりしているため、あざとさが伝わらず、逆にしっくりとして受け入れやすくなっています(やり過ぎた最近の例だと、てとてライオンの手鞠を上げたい所ですがファンが多そうなのでやめておきます)。簡単にいえば――下手うま?
 まあ、ともかく、それでは個別シナリオ毎に気になった点を軽く上げてみます。



 「〜ですよう」というのんびりした口調がぴたりと当てはまった良キャラ。シナリオは身分の差がどうとか、プロサッカー選手のディビッドとの恋の鞘当てとかあるのですが、そこらへんは普通です。むしろ妹の茉莉の幼い女王様振りが印象的でした。彼女に声がないのが大いなる不満です。


桂花
 男装ロリキャラ。前世では双子なのですが、今回はどちらかと悩ませる序盤の仕掛けだけは刺激されました。他は普通で特に語ることはありません。


蓮奈
 性的に無知なお姉さんが性行動とはSMなり――と勘違いして暴走する様子にはにやにやしました。


クララ
 ソフトに犬プレイします。終の館の躊躇なさの方がエロくて好きでした。シナリオは見る所はありません。


あやめ
 これまた特に語ることはありません。強いて言えば、アイキャッチのきょとんとした顔の可愛さは犯罪級です。


桜美
 このルートで過去と現在のキャラクタが繋がるのですが、それよりもストーリーの豪快さに吹きました。何もかもを問答無用とねじ伏せる剛腕でした。



 本作で追加された新キャラ。前世とかまったく関係がないお嬢様で、デレてるよー、デレてるよーと伝聞で聞きながら、目の前ではデレが見えないもどかしさに悶えさせられました。無駄がなくすっきりとしたシナリオでもあり、本作の中で一番出来が良いでしょう。


 以上。佳作ですが、楓ルートに一見の価値はあります。

  • Link

 Circus


 

ホームメイド スイーツ
サーカス (2008-08-29)