シドニアの騎士 1 感想

 太陽系が謎の生物により壊滅し、人類は存続するために宇宙を航海していた。そして再び謎の生物・奇居子〈ガウナ〉に遭遇した――


 BLAME!の作者によるそんなハードなSFコミック……のはずなのですが、そこかしこではっちゃけています。


 特に主人公の少年・谷風長道が絶妙に変で、非常に良い味出している田舎者に書かれています。最初は奇居子との戦闘シミュレーションでは特筆すべき成績を残している以外に特徴はありません。けれども“走っていて見えなかった穴から落ちた”ことで機体〈継衛〉に乗り実際に戦う衛人候補生となるあたりからどんどんあらぬ方向へ転がっていきます。
 そして学園物に突入し、常に腹を空かせた腹ペコキャラのまま、女生徒の着替えを覗いて叩かれる古典的ギャグをし、汎性と女性と三角関係に陥ったり、エリートに敵視されたりと大活躍します。基本的に田舎者として周りの同級生からは嫌われて、不幸な目に会うのですが、さっぱり動じない性格で飯を食い、のほほんとしている内に美人と仲良くなっていくのはラブコメでした。弐瓶さんの絵でまさかそのような物語が繰り広げられるとは思いもしませんでしたが。
 

 また全編フェチ全開なのも特徴となっています。女生徒が導尿でぶるっと震えたり、ゲロでタイツを汚したり、スク水になったり、触手でエログロがあったりします。黒と白のコントラストが強い絵でしたが意外とかなりエロく感じました。どういう効果でしょうかね。


 戦闘シーンは少なかったですが、奇居子の絶望的なまでの殺しにくさに対応するために作られた武器と宇宙での慣性が活かされていて燃えました。特に武器の仕組みはSFガジェット好きとして反応させられました。


 さて、コメディタッチの学園物でフェチがある“らしからぬ”とさえ言える物語を支えるのは矢張りシビアな世界観です。長道が腹を空かせているのにも、彼自身が選んだ社会的な理由があります。そのためにアウトローであり、底辺に住む孤児となっていました。にも関わらず衛人候補生に選ばれたという下克上の枠組みは少年成長物として極めて王道です。そこかしこは抜けてますが。
 だからこそBLAME!より受けるんじゃないかなあと期待しています。


 あと奇居子や継衛のデザインは普通ですが、構造物のデザインはSFっちっくで素敵でした。内装が意味不明に和風だったりするのもハイセンスで好きかもしれません。


 次巻以降戦闘も増えそうですし、三角関係がどうなるか、ひいてはどんなシチュが見られるのか楽しみです。

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 弐瓶勉 公式サイト【aposimz】