昔話から始めれば、かつてパラダイムノベルスやムービックゲームコレクション、ソフガレノベルズといったエロゲのノベライズを専門としたレーベルがありました。
CGやBGMなど複合的なエンタメで分岐を多量に含んだゲームをほぼ文字だけに落とし込んだといっても出来はそうバカにしたものではなくて、そこで『ONE』のノベライズから館山緑を知って、『Kanon』のノベライズで清水マリコを知って、『オレンジポケット』のノベライズで神尾丈治を知ると、個人的には結構な収穫がありました。
そうして読んできた中で記憶に残っている一作に『終末の過ごし方』があります。清水マリコが扱っているとのことで手に取ったのですが、かなりの当たり。原作を既に知っている方にとってはそんなもので理解したつもりになるのかと思われるかもしれませんが、世界の終わりまで1週間を控えて静かで底に焦燥がくすぶる空気やそして合間でノリの良いDJのKAWLな言葉が挟まれる格好良さに惚れ惚れとしました。
それで非常に満足して読み終えて、こう思ったのです。
自分なら、縁を選ぶと。
かつて別れた恋人・香織への慕情が最後の日に募るあの流れは確かに美しい。それに手を伸ばすのが遅れたのがまったくの猶予の尽きだけど、しかし最後に叫んだ、一人図書館でページをめくっていた縁を選びたいと。
…最期くらいは、気に入った人間の側で過ごしたいものだ。
最期の日に隣に誰を選ぶ――そこが分岐を選ぶ、ゲームということで。
ただなぜかしら――おそらくは小説で満足しきっていたせいで――これまで古典的名作と謳われながらプレイして来ませんでした。
今回DL版を購入して機運が高まったので、ようようにしてプレイした次第です。
――苦しい事は知らなくてもいい。
終末に直面したとき、縁が選択した生き方だった。
ここで自らがプレイして能動的に縁と最期を迎えられたことを言祝ぎたい。
それ以上語るのは野暮というもので。
落穂拾い。
・DJパートはそこまで分量がないのですが、やっぱり印象深いですね。
・どのルートも、他のカップルの描写も基本あっさりなんですが、その淡白な描写で伝えるべきことを伝えきっている手腕は凄かったですね。
・一枚絵はエロCG以外の方が良かったですし、構図も好みでした。
・音楽がやや弱いかなとは思い、そこだけは勿体ないかなと。
・あと敢えてスタッフロールをゲーム本編から分けたのが非常にGJ。シナリオが語るべきことを語り終えて、終末を迎えるに当たって何の余韻も容赦もなくズバッと切られてタイトル――The world is drawing to an W/end. 終末の過ごし方へと戻るのはこれ以上ない嵌った演出でした。
以上。10数年の宿題を一つ果たしてしまいました。
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