Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ1-3 雑感

 Fate/Prototype=1999年の聖杯戦争の前日譚、1991年に起きた聖杯戦争 /聖女の厄災の断片集。各陣営を描きながら、徐々に1991年の輪郭が明らかになっていきます。
 『1』は愛歌そのものを書くのですが、今一つ面白くありませんでした。ただ一人への愛に狂った天才キャラとしては、普通かなと。
 けれども『2』で死の呪詛を埋め込まれた女王・美沙夜の物語を知り、災厄の聖女によって決定的に食い違いながら女王として1999年に臨む誇り高いズレに戦き、『3』で平凡な少年が正義の味方になろうとしてあっけなく死んでからの物語を知り、はまっていきました。『2』以降は素晴らしいと言って良いでしょう。
 そして幼女綾香たんの可愛さで有頂天。地上に間違って降りて怖がる天使というか。これは桜井光でしか書けなかったのではないかと。セイバーと綾香がまみえるシーンの描写を読むのが楽しみです。
 ただ奈須きのこによる原始の衝動が歪んだ【姉妹』も読みたかったなとは思います。完璧すぎるから他に興味を持たなかった愛歌と、方向性が家によって黒魔術へと無理やり逆方向に決められた綾香という、彼女らは歪んだ鏡に移った相手です。そんな彼女らが自らの衝動に覚醒する瞬間、思うままに生きることを知り――それ以外の方法を取れない在り方を奈須きのこの文章で読みたいなと。溌剌とした自由意志なら桜井光に軍配が上がるかもしれませんが、その硬く真っ直ぐなベクトルを綺麗に書いてしまう魔的な文はきのこにしか書けないでしょう。

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