meth・e・meth 1 感想

 命令で書いた誓文により人形を操る技術が科学と共に発達し、誓文人形がインフラに組み込まれた世界が舞台。
 誓文を記憶するのが抜群なこと意外は普通の少年が、誓文人形の少女と出会い、"不明の誓文"にまつわる騒動に巻き込まれていく――という感じの内容。


 まず肝である誓文人形<オートスクロール>の設定ですが、かなりきっちりとしていました。そして誓文によっていくらでも用途の応用が利く利便性などの機能と、誓文を入れるシリンダーは外表に出ていないと行けないetcの社会上の規則との兼ね合いがなされており、作品内世界に溶け込んでいました。また主人公の少年が高校の"誓文部"に属することから、読んでいく内に誓文人形への理解も深まるようになっており、非常に練られた親切な作りになっています。
 そうしたガジェットの設定・世界造成に支えられ、発揮されるストーリーテリングは読む快感に満ちていました。


 ジュブナイルとしての側面で言えば、とっぽい少年がしゃきっとしているが人間の常識とは離れている少女に振り回されるというボーイミーツガールの基本的なツボは抑えていました。
 
 守るために同棲とかよくあるネタばかりですが、キレよく繰り出されるため、飽きずに読めます。


 加えて、暴力性が高いのも特徴でした。殺害・破壊・攻撃。必要とあれば必要なだけ行い、被害は行われただけ生じます。そこに容赦はありません。例えば、
 
 これとか、主人公が最初に失う物とか。一貫して容赦しない姿勢は崩さないので、強弱がはっきりし、状況が整えば、起こりうることが起こり、補正など無い緊張感が保たれていると思いました。あくまでエンターテイメント上で楽しめる範囲内として、ですが。
 また、この暴力性があるからこそ、誓文の基礎の基礎の設定が栄える面がありました。
 
 そう設定されているのは、何故なのか?というのは、もうとんでもなく物語の魅力的な駆動力となっています。
 これがあるからの裏表紙の進化図が示す意味のうすらさむさが際立ちましょう。
 
 或いは、彼が誓文に興味を持つようになった始まりの『大きな手』とか、随所に伏線がちりばめられ、読む興味が尽きません。


 以上。このままのテンションで続いていくなら、そんじょそこらの作品が霞むぐらい凄いですが、さてさて。続きに期待です。

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