ピリオド感想

  • 感想

 とある設定や謎が複数のルートで使われていて、攻略上は順不同なのに情報公開の程度の差があることにより、とあるルートが全てを説明する興醒めなネタバレとなってしまったゲームはそれなりにプレイした経験があります。現在、ぱっと挙げられるのはWindぐらいですが。
 また、とある設定や謎の説明がルート毎に明かされ、好い加減くどかった覚えがあるゲームもあります。具体的に何かは忘れましたが。
 それで共通背景を用いた複数ルートの弊害を回避しようと考え、ルート毎に全く別物にしたり(例えば十六夜れんか)と工夫をこらす良心がある会社もあることにはあります。

 この観点から考えると、ピリオドはかなり個性的な方法を取っています。プレイ時に入っているルート上ではそのルートについて何も説明していないのです。まず幸奈ルートでは何故小さくなったのか解答は示されませんし、何度も引越しした理由も語られませんし、父親が何処に行ったかも明かされません。反してつづみルートでは追っていたのは誰か、何の組織に入っているのか、直接的には語られません。この2つのルートを共にやることでそれなりに推測できるようになっています。


 (以下ネタバレと思われるので気になるのなら反転してください)
 つづみルートの最後でつづみも小さくなることと、幸奈の父親がつづみと同じ世界に属していたことから、あの飴は2人が属していた世界の住人の血を引く存在に限定で小さくなる作用を持つと考えられます。


 また他のルートを終えて初めて出てくるという高位に属する朝姫ルートでは、他のルートで主人公が朝姫が自分を好きではないことを確信している理由と、時折出た冷静な声の正体が判ります。こうした完全な相互補完により、主人公があるルート上で得る情報の量とレベルを自然なものとし、同時にプレイヤーに対しての情報提供の最大限効率化を成し得ました。その結果として、各ルートごとに対するイメージは説明不足で短過ぎとなりましたが。


 さて、不満が噴出し始めましたし、構造についてそれなりに語ったので、後は文句に移ります。対象は塗りも合わせて一級品のロリ絵と、ほとんど完璧といって良いシステム以外のもの、要するにシナリオについてです(声と音楽について見識は持ちません)。ヒロインルート上では情報を最小限に抑えられていると書きましたが、同時に構成も単純きわまりなく、魅せ方も稚拙でした。どれもこれも通り百篇か、説明足らずか、無内容となっています。例えば小羽ルートでは小羽は羽の存在と評判の下落により差別され、学園という共同体から弾き飛ばされそうになり、その解決として裁判が持ってこられるのですが、学生の群集心理がお手軽に左右され、悪いご都合主義になっています。こういう工夫のないシナリオを読むと丸戸が持て囃したくなるのも判ります。
 また一番がっくりきたのは意味のなさです。これは勝手に期待した私が悪いのですが、何故長崎なのか、何故羽が生えているのかについて全く触れられていなかったのが極めて残念でした。下手に理屈付けしてなんちゃって電波やSFとなるより、そういうものとして受け入れるにはどのルートを見ても必然性がなさ過ぎで、美しくありません。エロゲーの範疇をぶっちぎりで越えますが、魅力的な偽史を作れる可能性があったかもしれないと思うので、残念です。
 

 以上、期待しすぎた感があります。ロリに偏ったキャラ萌えがそれなりにあるのですが、総じてお薦めしかねる出来でした。それにしてもLittlewitchが傑作を作るまで何時まで待てばいいのでしょうか。

  • LINK

 OHP-Littlewitch