燃えよ剣 上・下 雑感

司馬遼太郎による土方歳三をメインとして新撰組を取り上げた歴史小説。 最近だと京極夏彦による土方歳三をひたすら人を殺してみたかった人間として書いた『ヒトごろし』やちょっと前だと浅田次郎の新選組三部作やら読んできましたが、そもそものこの有名作を…

クロックワーク・ロケット 雑感

<直交>三部作の1作目。 相も変わらずハードSFなのですが、本当に歯応え抜群でした。 や、概要を書くと単純な物語なのです。ある惑星の滅亡の危機を救う手段を発見するために科学者たちがロケットに乗って旅に出る、と。 ただただ、その世界の法則への徹底…

あそびあそばせ 13 雑感

遊び人研究会に属する女子中学生たちがゲッスくてブラックなギャグを飛ばしながら箍の外れた顔芸を見せるイカれたコメディシリーズ。 これまで巻を12も重ねてきて、ゲッスくてブラックな女子中学生コメディという基本路線は変わらないものの、次第にキャラが…

零號琴 上・下 雑感

惑星・美縟の首都では開府500年を祝う祭りで首都全住民が假面をつけて催される假面劇の準備が進んでいた。假面劇に合わせて惑星の大地から作られる巨大な楽器・美玉鐘を用いて国を啓いた曲<零號琴>を鳴らす計画に特種楽器技芸士のトロムボノクは巻き込まれ…

双亡亭壊すべし 1-25 雑感

東京・沼半井に<双亡亭>というおばけやしきがある。空爆されても壊れない、ねじれたお屋敷。なんとしても<双亡亭>壊すべし―― 藤田和日郎氏による長編漫画。 自衛隊に空爆されても<双亡亭>は無傷で健在であり、なんとしてもかの屋敷を壊せと総理は全国…

アルマダ 上・下 雑感

鬱屈としたスクールライフを過ごすオタクの男子高校生の前にシャトルが衆人環視のもとで降り立ち、ダークスーツを着た捜査官が地球を救う戦いへと誘ってくる。彼は騒ぐ周囲を背に一歩非日常へと踏み出す―― ついに来たぞ、ザック。おまえがずっとずっと待って…

潮が舞い子が舞い 8 雑感

海辺の田舎町の高校生たちの群像劇も早8巻目。 1~5巻までの感想で述べたような、等身大の高校生たちが喋り合う時間の切り取りの巧みさは衰えを見せず、むしろより深化を見せて行っています。 どうしてあんなことで騒げたのだろうか、そんなことで長い時間言…

ヴィークルエンド 雑感

生まれてくる子供が共感覚を持つようになった現在、自分自身の体を乗り物として操縦するように認識させるサプリ『ヴィークル』を用いたヴィークルレースが若者の間で流行しつつあった。羽鳥哉視は新チームの一員としてヴィークルレースに挑む―― ライトノベル…

スキップとローファー 1-6 雑感

石川県の田舎町に住む少女・岩倉美津未は高校進学を期に東京に上京した。頭が良くて自信家だがどこかしら抜けている美津未は代表挨拶をする入学式に遅刻し、先生にゲロを吐きかけてしまう。落ち込む彼女だが、しかしそれは楽しい高校生活の始まりの日で―― 女…

君の話 雑感

一度も会ったことのない幼馴染がいる。僕は彼女の顔を見たことがない。声を聞いたことがない。体に触れたことがない。 (三秋縋.君の話(ハヤカワ文庫JA)(p.8)) これまで会ったことはなく、これからも決して会うことのない筈の幼馴染を追い求めるSF小説です。 …

戦場のコックたち 雑感

1944年ノルマンディー上陸作戦にティモシー・コールはアメリカ陸軍のコックとして従軍することになった。彼は同じ中隊に属するコックたちと奇妙な事件に遭遇しながら戦場を這いずり回る―― 第二次世界大戦を舞台に、食べることが好きで平凡な青年の一兵卒を主…

ハケンアニメ! 雑感

辻村深月さんの小説はそこそこ集めているのですが、キャラクタ同士が繋がっていて読む順番に気を付けた方が楽しめるとどこかの感想で読んでから揃ってから何時か読もう枠に入ってしまっていました。 しかし今回同作の映画を観て予想以上に面白かったので、掟…

新婚のいろはさん 1-6 雑感

シュールな漫画を描く漫画家と年上の幼馴染との新婚生活を描く4コマ漫画。 苗字が題名につくようなカップルがメインのラブコメ漫画は高木さんのスマッシュヒットでメインストリームと化し、まだまだ猖獗を極めています。出来が良い作品は数多くあり、個人的…

その孤島の名は、虚 雑感

10年おきに生徒たちが校舎ごと神隠しに遭うという吉祥寺南女子高等学校。今回は吹奏楽部に所属する24名の女子高生が謎の島へと飛ばされた。突如現れる牛や大蛇、そしてシルエットのヒトガタに襲われ、仲間が次第に減っていくことになる。彼女たちは島の謎を…

鯨の王 雑感

深海を舞台にしたSF小説。 新種かもしれない鯨を巡り、学会の鼻つまみ者の日本人鯨類学者が企業に雇われて探索するパートと、アメリカ軍が潜水艦や海底基地を襲われて対抗していくパートとが書かれています。 追っていく側と襲われる側の両方からの視点で徐…

ゼンデギ 雑感

イーガンによるSF長編。 ここ最近では2018年に「白熱光」、2020年に「シルトの梯子」と読んでいるので、本当に偶々ですが2年に1冊ペースで読んでいることになります。本来なら<直交>シリーズに行く予定でしたが、気後れして単発のこちらを選びました。 さ…

七人のイヴ 上・下 雑感

月を見ろ「今はだめよ、パパ。月がきれいなのはわかってる。今デバッグの最中で……」 あるいは月だったものを「え?」 彼女は窓に顔を近づけて、月の方向に首をひねった。そこにあったのは過去の存在であり、宇宙は変わっていた。 (ニールスティーヴンスン.七…

ハクメイとミコチ 10 雑感

森の中に住む小人や獣・虫たちの何気ない日常を描くファンタジー漫画の第10弾。 これまでも感じていたのですが、本当に良い世界、良い街、良いキャラクタの良い時間の過ごし方を描いているなあと改めて実感しました。 RPGで思い出に残る街や村にあたった時に…

medium 霊媒探偵城塚翡翠 雑感

霊視ができ死者の魂を下せる霊媒・城塚翡翠と推理作家・香月史郎とが殺人事件を解決していくという連作推理短編集。 前評判「ミステリランキング5冠、第20回本格ミステリ大賞、このミステリーがすごい! 1位」に身構えすぎたきらいがありました。どんだけ背…

日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽 雑感

奇想寄りのSF短編集。 良いショートやショートショートが何本も入っていて満足行きました。 以下好みだった短編の雑感。 山の上の交響楽 宇宙の寿命と等しい長さの曲を目論まれ演奏するのに数千から万年かかるとされる交響曲の山場を迎えるにあたった起こる…

日本SFの臨界点[怪奇篇] ちまみれ家族 雑感

伴名練氏によるSF短編小説アンソロジー。 恋愛篇とは打って変わって異形・グロテスクが表に出たり馬鹿々々しいホラ話のような短編が収録されています。これはこれでSFの楽しみ方の一つなのだという良いショーケースでした。 収録されている短編への簡単な感…

日本SFの臨界点[恋愛篇]  雑感

伴名練氏によるSF短編小説アンソロジー。 力の入った巻頭言と後記、扉でのこの小説家はここが凄いとかあんな素晴らしい小説を残してきたとか嗚呼短編集の刊行が熱烈に待たれる――と言う言葉の連なり。SF小説とその歴史への迸る愛に圧倒されました。 そしてそ…

夢の国から目覚めても 雑感

百合漫画の同人サークルの片割れである有希は相方の由香に恋をしていた。しかし由香は彼氏が居たヘテロであるため心に秘めていた。しかし共に同人活動を続けるうちに想いは募っていき、ふとしたことから丈をぶちまけることになる―― 百合小説。 前編ではすれ…

重力アルケミック 雑感

重力を操作するテクノロジーが発達したが、その源の重素の発掘によって地球は膨張するようになった。そもそも枯渇しかけている重素はすべて世界の国家管理にあり重素工学は先細りつつあったが、とかく会津若松から遠くに行きたかった湯川航は大塚大学理工学…

青い砂漠のエチカ 雑感

<致死性複合性感染症>により人類は現在進行形で減少しており、AIによる感染リスクの算出値によって行動制限が設けられるようになった未来。社会のシステムが死に至る感染症に適応し激変し、ARとVRが否応もなく発達した2045年。少年と少女はそれでも出会う―…

ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン Ⅰ~Ⅹ 雑感

VRMMO<ガンゲイル・オンライン>を舞台にしたSAOの外伝小説。 銃火器が武装のメインという世界は作者・時雨沢恵一さんにとって自家薬籠中の物。結果として、VRMMOでサバゲーを思いっきりやろうという非常に趣味的な小説が降臨したのでした。 主に描写される…

ワン・モア・ヌーク 雑感

2020年3月11日 東京で原子爆弾を爆発させるとテロの予告がされた。未曽有の大惨事になるタイムリミットまでに犯行を防げるか―― 長編サスペンス。 東京で原子爆弾を爆発させるために準備するテログループ、スペシャリストの視線からテロに用いられうる原子爆…

パワーワードの尊い話が、ハッピーエンドで五本入り 1,2 雑感

「パワーワードのラブコメが、ハッピーエンドで五本入り」に続く、電子書籍のみでの出版の短編集。それぞれ5本の短編と1本のボーナストラックが収録されています。 前の感想で相方同士の生み出し方が巧みだと書いたのですが、相変わらずその手腕は健在。 そ…

2DK、Gペン、アフタータイム。 大沢やよい短編集 雑感

大沢やよいによる百合漫画短編集。 『2DK、Gペン、目覚まし時計。』のアフターストーリーが読めるのが看板の一つです。あれからの甘々な日常を描いてあり、当シリーズを読み通した身としては確かに大いに楽しみませてもらいました。 しかし本短編集で最も時…

名馬堂々。 雑感

返す返すウマ娘のアプリが競馬への姿勢をがらっと変えました。 それまで心底興味がありませんでした。強いて競馬関連の情報を目にしたことがあると言えるのは、ジャンプでマキバオーをちらっと読んだことがあるなとか、ディープインパクトが新聞で騒がれてい…