俺より強いあの娘を殴りに行く
小説になろうに連載された完結済みの作品です。
一言でまとめれば、その時スパ3に人生の何割かを懸けた人たちの物語。
この小説は『ハイスコアガール』のようなゲームのパッケージに物語を担保するのではなく、『ソリッド・ファイター』や『連射王』『THE END OF ARCADIA』のようにゲーム攻略/コマンド入力に比重を置いて進めていくタイプです。後者のタイプの小説は、コマンド入力の下となる発想の斬新さと、コマンド入力の確実性を高める手つきの繊細さと、結果としての画面上でのゲームの展開の燃えがシンクロすることで、一度読む流れに乗ると、そんじょそこらでは味わえない興奮を得ることが出来ます。ゲームをプレイしていてごくれまれに感じる、このプレイは凄いんじゃないかなというゾーンへの一触れのような、ゲームの醍醐味の追体験とも捉えられるかもしれません。
そして、この小説も御多分には漏れません。
何はとまれ、何もかもが熱い。
浩介の横で、忍が苦笑した。
「なにそれ?」
至近距離で斬空(斬空拳の略称)なんてありえない。そういう「なにそれ」である。
「なにそれっ!?」
忍の予想に反して、斬空拳はリンにヒットした
(『お前、勝つ気あんのかよ!』とあの娘は叫んだ。(三・四))
目の前の人物がどういうキャラクタをどのように扱うかで繰り広げられる格闘ゲームというコミュニケーションが繰り広げられる中で、全編にこの「なにそれ」というワンダーに満ちています。あとはうんボーイミーツガールの青春とか。読める幸せと、読んだテンションの上がり方の幸せと言ったら、もう。
ただ不満は一つで、これ単体ではさっぱり物語が締まっていません。第二部『コロシアム編』を超希望。
以上。手に汗握る良作でした。
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