狼の口5 感想

 3巻から続く、ザンクト・ゴットハルト峠の立つ関所"狼の口"攻略戦も佳境になりました。屍を重ねて恨みを募らせ、屍を重ねて砦の内部に至り、屍を重ねてついには代官ヴォルフラムの元へ辿りつこうとします。が、これまでさんざんと密行を暴き、密行者を拷問してきた彼ならではの堅牢な砦であり、当然一筋縄ではいきません。
 これまでにも本当にざっくざっくと死体が関所の入り口に重なってきました。鉄格子を自爆兵器で破壊して入り口を作るために、水牢に薪と死体を並べて道を作るために。ただただ憎い、憎いヴォルフラムを殺し、同胞に未来をもたらすための執念の賜物です。
 砦の誇る最強の騎士も多対一で何とか押し切り(この大人数で押し切る弱者の戦い方も燃えるのですが)、

 残りはこの砦の中からヴォルフラムを探すのみ――! 
 ここからの攻城戦が実に燃えます。
 外からはギリシャ火と矢で嬲られ、内からは随所に設置された鉄格子と扉で足止めしながら弓で攻撃されつつ、磨り潰す仕掛け付きの落とし穴などの性根の悪い罠に掛けられます。何とかして上層部に行く螺旋階段に来ても、作りに簡単ながら効果のある侵入者対策がなされており、簡単には登れない。そしてほぼ制圧しても、屋根や通路など隠れる場所が多く、全然見つけられません。このように障害を越えるごとに更なる障害が起こり、そのたびに絶望しかかるのですが、些細なひらめきと即席の工夫で障害を乗り越えていきます。
 この地道な攻略を見取り図をそこかしこで使ってひたすら丁寧に描く面白味といったら、もう。溜まらない人にはきっとお宝物です。私も読んでいて嬉しくなって踊りだしたくなりました。乞う、ダンジョン探索小説 - ここにいないのはでも書いたのですが、迷宮とか砦とかを攻略する作品に目がないんですよねー
 さて、最終的にどこまで追い詰めるのか、それとも大逆転されるのか、どうなのかは書いては興ざめ。読んだ方がない方は1-4まで読んで恨みつらみを追体験してから読んでほしい所。憎らしきはヴォルフラム、それにしても最後まで厄介な相手です。
 これからどうなるかの予測は正直難しいですね。これまで残酷中世絵巻できたからにはがつーんと落とす気がするのですが、ここから落とされるとちょっと立ち直れない読後感になりそうです。続刊に戦々恐々として待ちたいです。


 以上。攻城戦の傑作でした。

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