血界戦線1,2 感想

 舞台となる街の名前はヘルサレムズ・ロット。たった一晩で異界と繋がり、怪物・化物・異形が跋扈する魔都となった元ニューヨーク。そこで平凡な記者の青年は世界の均衡を保つ超人集団“ライブラ”と関わることになる――

 
 という内容。血を武器として操る血闘術/血凍術/斗流血法を駆使して闘う超人たち、姿を消して追跡出来る美女の人狼などなどがライブラの構成員であり、都市を壊すために邪神を降ろそうとしたり、人身売買をしたりするなどの犯罪を正して行く冒険活劇が基本路線となっています。
 和製アメコミとも言うべき設定&展開なのですが、自家薬籠が極めて巧みであり、何処もかしこも魅力あふれる傑作と化していました。まず煩雑としていて何処か熱気溢れるヘルサレムズ・ロットは魅力ある都市ですし、超人たちの能力の振るう様は格好良い上に、日常は上質なオフビートとなっています。
 格好良さについて更に触れるならば、絵と勢いによる際ものすれすれのセンスが光っていました。特に2巻で出てくるボードゲーム・プロスフェアーは激アツです。チェスと将棋が組み合わさったような独自の物と言われて、局面が変わるごとに増加していくボードと変形してく異形の駒が表示されて、後は只管に戦術と戦略に苦悩するプレイヤが描かれます。その説明不要な圧倒的な絵は読んでいて物凄い熱気を生じさせていました。
 あと台詞回しも戦闘中を筆頭に最高に熱いものばかりでした。例えば1巻の最初にライブラの所長が振るう蛮勇。

 ブレングリード血闘術
 …推して参る
  (『血界戦線 1』、P83)

 この短い台詞と戦いに赴く背中だけでキます。或いは挫けぬ心。

 そうだ
 レオナルド君
 一つだけ認識を改め給え
 君は卑怯者ではない
 何故ならまだ君は諦めきれずにそこに立って居るからだ
 いいか
 光に向かって一歩でも進もうとしている限り
 人間の魂が真に敗北する事など断じて無い
  (『血界戦線 1』、P84-85)

 若しくは冥土の土産。

 憎み給え
 赦し給え
 諦め給え
 人界を護るために行う我が蛮行を
  (『血界戦線 2』、P179)

 燃える――としか言いようがない数々の熱い名台詞を堪能しました。というか、クラウス所長がもう堪らなくかっけーっす。紳士で繊細でボードゲーム狂で、不屈の戦士。惚れました。


 以上。これぞ少年漫画。面白かったです。

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