丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ 感想

 第15回スニーカー大賞優秀賞。
 よくある部活物かと思いきや、豈図らんやクレイジーな傑作でした。


 丘部――オカルト研究会に集まる変人たち。風景をこよなく愛し、語り始めると周りが見えなくなる主人公・咲岡。絶世の美少女でありながら、エロスを追求してエロ単語がポンポン口に出る江西陀梔。とんでもない身体能力を持ち、常に前向きな体育会系気質の出島進。体の弱い小動物系の女郎花萩。そして傍若無人の部長、沈丁花桜。
 また丘部に強い反感を持つ規則正しい生徒会長がいます。
 ……文字で書くだけなら類型が思い浮かぶキャラ立てです。しかし、彼らが飛び降りても死なない中年男というオカルト話の真偽を確かめようとした時から、話が――キャラクタがいい感じに歪み始めます。

「論より証拠だ」
 (P110)

 現れたのは、世界征服を臨む部長が率いる部活――ライトノベル的な日常を過ごす、異常。そうして変なペット探しや連続殺人といった連作形式でどんどんと異常が顕になっていきます。その異常は最初の表向きのキャラ立てとの関係を含めて実に切れていました。西尾維新以後の青春の傷みのクレイジーとしては最良の部類に入るでしょう。
 変態にツッコミを入れる一人称+語ることで現れる語り手の異質という、これまたあるあるな文章も並以上だったと思います。


 以上。何はともあれ良質の青春エンタではあるのでそれなりにお薦めです。
 

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 なお最大の欠点は、主人公の異常がとうとう現れる最大の見せ場において、死体を描く絵描きなんて別に珍しくもないだろう!というツッコミを入れたくなる点かと。