惑星のさみだれ8 感想

 地球を壊そうとする魔法使いがいた。彼に対抗するため、精霊<アニマ>は姫を選び、獣の騎士団を結成する。トカゲ、カラス、犬、etc獣の精霊に選ばれた人間は掌握空間という超能力を得て、魔法使いとその泥人形と戦うことを強制される。
 代償はひとつだけの願いの成就。
 騎士団は仲間を失いながらも、地球を守るため、またそれぞれの目的のため戦うことを止めない――
 

 という感じのシリーズ。
 泥人形に無防備に殴られればあっさり死ぬという現実味を基盤においた戦闘パートは死と隣り合わせの緊迫感が常にあります。序盤から生の特権はないと提示されていて、ライバル・師匠・仲間といった定番を極めて単純化した“熱い”関係が形成されながら、死によって容易に断絶します。だからこそその時が輝いているのだと、あえて言われなくとも出会いと別離を重ねる事で読み取ることが出来ます。また死やトラウマなどの克服する“泣き”も存分に味わえます。合間合間には間の抜けた日常のギャグパートや直球の青春パートが入り混じることでメリハリがありました。
 そういった“燃え”と“泣き”とが詰められた青春マンガであり、常に続きを楽しみにしているシリーズです。


 この巻は佳境に入っていて、直接的にアニマの口から物語の終盤であることが宣言されます。そして、大きな戦いが二つあります。
 ひとつは予告されていた、ありえない再戦。

「この間夢を見たんだ
 長い階段をキミが駆け上がってきて
 おれがそれを阻む」

 取り返しの付かないルールを教えられ、戦う方法を伝えてくれた人との最後の戦いであり、その再会と対等に戦える歓喜を見て震えました。今まで経験した勝負と、勝利と敗北の果て。そして明らかになる、主人公の青年が求め、手に入れた“力”。


 ――ああもう、なんて燃える展開!


 構図も合わせてもうべったべったなのですが、あまりにも定型を突っ走られると諸手をあげて受け入れるしかありません。


 もうひとつは最強の泥人形との戦い。ダメージを受けているように見えない、とんでもない攻撃力を持つ敵にどう立ち向かうかをひたすらやります。これまた燃え燃えでした。


 にも拘らず最後に遥か斜め上に物語をかっ飛ばして終わるのですが、それは読んでのお楽しみ。今からもう続きが待ち遠しいです。


 以上。超お勧めです。

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