活動漫画屋小説一式 感想

 C76で購入させていただいた活動漫画屋さんの小説を全て読んだのでその感想をば。
 読んだのは具体的には、

  寒緋桜
  大禿
  妖怪部・犬神絵解き
  茂林寺

 の4冊。作者の方による概説は“人形城奇譚 今週気付いたこと。小説発注あった ”あたりを読めばあるかと思います。
 それでは個々に述べていきますが、若干ネタバレになっているかもしれないのでご注意を。

  • 寒緋桜

 所有されているのは「カラオケハッピー」「寒緋桜」「歌は世に連れ 世は歌に連れ」の3編。
 最も印象的なのは「自虐の詩」「人形城の箒神」で出て、幸薄かった十詩子のスピンアウトである「カラオケハッピー」でした。
 ジャイ○ンばりの歌唱力を静謐な一人称文体で自ら実況するオトボケな部分と、カラオケボックスでの人と歌との数ある関係の幾つかとすれ違いって自分の道を模索しだす思春期の描写が合わさり、後味のよさも手伝って、良い意味で一癖ある青春物となっていていました。


 「歌は世に連れ 世は歌に連れ」はかるた道同好会の中学2年生の少女が一人称であり、恐らくは「カラオケハッピー」と鏡の様に対応しているのでしょう。


 「寒緋桜」はマンションを舞台にしたホラーの佳作でした。

  • 大禿

 所有されているのは「ストーカー」「大禿」の2編。


 「ストーカー」はまさに電波なホラーでした。“徐々に買う物が変わっていく”という設定が興味深かったです。


 「大禿」はあらゆる動植物が石化していく地球で石化を止める研究をする研究者と被験者との交流と、研究の行く先を描いています。題名にそぐわぬSFめいた話が繰り広げられ、?と思いつつ読み進めましたが、最後の最後で見事に美しく着地するのを読み膝を打ちました。日本に数多く親しまれているとあるモニュメントの絵解きにもなっているのにも感心しました。
 見事な快作です。

  • 妖怪部・犬神絵解き

 ビジュアルノベル「犬神使いと少年」の後日談。本編のストーリーについてはほとんど触れられていないため、作者のあとがきにあるようにどちらから読んでも大丈夫なようになっています。
 

 内容は題名通り、また作者の今までの作品と気っても切り離せない、鳥山石燕の妖怪画の絵解き(イコノロジー)を作中内人物が行っています。知識と知恵とを駆使して解釈していく様は爽快であり、また知的好奇心がびんびんに刺激されました。
 肝である「犬神 白児」の絵解きの展開の見事さといったらもう素晴らしかったし、美しかった。他の画についても気になるので、自分で調べてみることにします。

 何事にも深く知ろうと/関わろうとしなかった今時の少年が落語にはまっていくのを只管書いています。これまたこの短編を読んで落語を聞きたくならなかったら嘘だろうと言うぐらい、はまっていく段階が臨場感たっぷりです。


 以上。論理と心理のアクロバットの競演を堪能しました。

  • Link

 人形城奇譚
 自虐の詩AnotherBirthday 公式
 鳥山石燕 - Wikipedia
 画図百鬼夜行 - Wikipedia
 イコノロジー - Wikipedia


 調べている最中で↓のブログを見つけて面白かったのでリンクしておきます。
 とある絵描きの物語