- 感想
D.C.IIのサイドストーリー集。モチーフは雨で、4編で多かれ少なかれ係わってきます。それではまず各ストーリー毎の感想をば。
・紫陽花
紫陽花を好きだった女性、由姫――音姫と由夢の母親を付属に通い未だ朝倉家に居候している義之が回想するという構成のストーリー。
大きなテーマがその由姫との関係で、付随して幼い頃と付属時代における朝倉姉妹どきどき同棲生活が披露されています。
まず由姫との関係は、義之にとって母の獲得になっています。義之の記憶が始まった=物心をついた時に彼が初めて目にし認識したのがさくら。しかし朝倉家に居候し、朝倉姉妹との生活に慣れ、彼女たちが慕う由姫と出会い、慈しまれて生活していくうちに、当然のように由姫に母を感じていきます。由姫も受け入れながら、義之の本当の母親についてもきちんと言及します。
そうして絆ができた後のことは詳しく語るまでもなく、一つの約束を残して失われます。
『ふたりのこと、守ってあげて』
その過程はD.C.II本編を知っていればこそ、しんみりこないはずがなく。
なお蛇足ですが、D.C.II P.C.のクライマックス付近や、D.C.II S.C.での喪失感を鑑みるに、義之が『彼女』と再会し、
おかあさん
――と、そう呼ぶ時に『彼女』の長いお話が終わるのでしょう。
・雪月花
雪村杏、月島小恋と花咲茜が仲良くなった話兼義之、板橋と杉並が仲良くなった話であり、彼ら6人がグループを作るようになったきっかけを描いています。
The 青春としか言いようがないDCらしく王道を行きました。プレイヤはこれから仲良くなり数々の出来事を重ねて共に成長していくという輝く未来があることを知っています。そこに向かって手探りでわいわいがやがやと進んでいく少年少女たちを見るのは、初々しさに目を細めるとともに時間の流れも感じ取れるため、なお一層楽しい物語となっていました。
・まひるに降る雨
本編まひるルートエンディングのアフターでもあり、ミキの部屋でミキからまひるとの学園生活を聞くという形を取っています。
いやまあ最初は義之がミキの部屋にいることに何事かと驚きましたが、それは置いておきましょう。
しかし感想といっても詳しく言っても野暮。もう泣いたとしか言えません。そういう流れしかないだろうという方向につつがなく進むのですが、判っていてなおかつ耐えるのが無理でした。
そうそうあとミキと舞佳の意外な関係やまひるの例え話のオリジナルなど些細なこぼれ話も収穫でした。
・機械の心
欠陥品のμを義之が拾い、家にかくまううちに愛情が芽生えていくというオリジナルストーリー。
こちらは逆に取り立てて感想を書きにくい粗の見当たらない渋めの話でした(μの構造に疑問を投げかけるのは禁則事項。
舞佳の想いや義之のロボットへの親和性を確認出来たかなあぐらいでしょうか。
以上。どれもこれもしっかりとした中身を持つクオリティ高めの短編ばかりで大満足でした。音楽も名曲揃いで文句なし。
D.C.II S.C.と言い、絵・音楽・シナリオに外れがなく、なおかつ歴史を豊饒にするという最高のシリーズ展開となっています。今後のFDが出るとしても期待が出来るでしょう。ミキと水越舞佳が攻略キャラフラグ立ちましたし。
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OHP-Circus