ダンサー・護堂恒明は事故で右足を失いAI制御の義足となった。一般性から外れた彼は、人間のダンスとロボットのダンスの共存を目指して人間性をもたらす手続き<プロトコル>を探る舞台に立つことになる――
長谷敏司氏によるSF長編小説。
人間の身体性をロボットとの関係から思索し、ロボットと共演するダンスとして表現する――その過程を書いているのですが、幾重にもわたる問題に囚われて重苦しい道筋となっていました。
問題の根本としては護堂が人間であることがネックであり、人間の人間性から自由になれない中でどう振る舞うのかもがき続けることになります。
まず己の身体の制御――AI制御の義足で踊れるようになるのか。
それで人間と異なる他者との共存――AI制御のロボットとのダンスと共演なんて出来るのか。
テクノロジーの発展による人の拡張というSFらしいテーマが発展していくその上で、人間の人間らしいところ――親の衰えと介護と死の問題が絡みついてきます。その日常の重さにひとりの人間として打ちのめされても懸命に生きていくしかないことで、人としての身体性/人間性の強度が否が応でも高められていました(ただ日本であんな人工呼吸器外し方ってあるのー?という気もしましたが、未来の日本なのでひとつ)。
そして重くて暗くても逃げずに生きていくのを読み進めていった先にあった、すべてがある種の解決を迎えるクライマックスのカタストロフィがこれまたとんでもなかったです。
人間とロボットのダンスから人間の生命の鼓動を存分に浴びた後のこと。――そのあとで人工的に人の生命の鼓動を続けて、それが潰えていく終幕。
この作品にあまりにも相応しい終わりであり、胸に詰まらされました。
以上。素晴らしい作品でした。そうそう読み直せるものではありませんが、またいつか人生のフェーズが変わったら読もうと思います。
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