高校生から始まった桜子とかすみの同居生活は8年目。大学4年の卒業旅行~就職1年目までを描いています。
年を経てステージが上がっていっても二人の同居したまったりとした日常は変わりません。
お互いは判り過ぎるぐらい判っている以心伝心で、ずっと一緒にいるのが普通で、旅行といったちょっとした変化を互いに笑って大いに楽しみ、別れるなんてとうてい思いも寄らないあいだがら。気持ちの良い関係を気持ちよく描いてくれていて、読んでいて幸せな気分で満たされます。
ただ親愛が嵩じているので、読者にとって時々甚だしくキュートに過ぎ、ちょっとした台詞回しにどきどきしてしまいます。
例えば卒業旅行でハワイに来て二人っきりになって曰く。
(ふたりべや(9)、kindle No.55)
気が早い―――ですってよ!!!!
或いはかすみが桜子にボードゲームで運が良いと言われて、桜子をじっと見つめて、「確かに私 運が良いほうかも」と宣うんですよ。
それらがちょっと淡泊なかすみの台詞で、そこに籠められた未来への想いと、今どう思っているかの推測で、きゅんきゅんしちゃう訳なんですよ。
でも、まだそれは言葉になっていません。人には説明しづらい、切り離せない関係のふたり。
ふたりの関係をなんて名づけよう、と。
同居自体は終わらないものの、ステージが変わっていくにつれて、色々な縁が作られてきました。
高校の同級生で結婚した子がいて、一緒にいたい以上のことができると言っていて。
大学の同級生で同性同士で付き合いだした子がいて、片方はそれでも居なくなっても誰にも探して欲しくない軽さを望んでいるとアンビバレンツなことを言っていて。
仕事場で不倫でも良いと格好良い上司に迫っていく同僚を見て。
桜子の出会った彼女たちはどういう関係になるか決めていきました。
ではふたりべやに住む関係性を本当にレッテルを張らないといけないのか――
だから――本巻の最後の最後の桜子の台詞で悶えるのですよ。
レッテルを張って、かすみを紐づけようという想いに、そこに籠められた感情の強さに、そしてちょっと照れた顔に、乾杯。
さいっこうの何気ない告白でした。
以上。これこそ私が最高と想う百合漫画の一つという破壊力でした。
さあサイは投げられて、かすみにリアクションを求められる次巻をちょう楽しみにしています。
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